次世代型ITスクールITeens Labでは2023年1月より試験的にメンター制度の実験を行いました。
2024年4月〜7月では4組の生徒・保護者にモニターになっていただきました。
メンター制度とは
生徒一人につき一人の「メンター」を設定します。
毎月2回、生徒・メンターと30分程度の面談を行います。
面談の中でITeens Labの中での活動方針や、スキルの成長方針など本人の希望を聞き取りつつ、相談または助言をします。
また、メンターとの面談ではITeens Labの活動をメインのトピックとして取り扱いますが、学校のことやプライベートなことなど個人的なトピックに関しても相談できます。
メンタリングの目的
- 生徒が自分の中で学びたいものを明確にすること
- メンターは最適な教材(学び方)を一緒に考える
- 生徒が必要な情報にアクセス出来るようにする
- 保護者のIT教育に対するコミットメントを高める
背景
メンター制度の目的
・生徒のITeens Labでの活動をより有意義なものにする
・生徒・保護者と連携の取れた中長期的な指導方針を作成し、日々の学習や活動に取り組んでもらう
・次世代型教育スタイルの実証実験
インターネットや様々なツールの発達、そしてAIの台頭など社会構造が大きく変化する中で、既存の教育システムは時代に合った最適なものだと言えるでしょうか。
知識を暗記し、あらかじめ正解が定められた問題を解く能力は既に時代遅れと言わざるを得ません。
教育者側も子供たちに提供する価値について時代にあったものを提供しなくてはいけないと考えています。
これからの時代にITeens Labが子供たちに提供出来る価値は何か、を考えた結果、一つの答えが「子供たちに寄り添い導く」ことです。
しかし、実際にその価値をどう提供していくのか、に関してはまだまだ未知数の部分がたくさんあります。
長い目でこの変化に対し、ITeens Labはアップデートを繰り返していく方針を立てました。
実施内容
2024年4〜7月の期間において4組の生徒・保護者にメンター制度のモニターになっていただきました。
毎月2回、生徒それぞれとメンターが30分ずつの面談を行いました。
保護者さまは初回と最終回のみ参加をお願いしました。
メンターは、ほたか先生・やましょー先生・たにえん先生・あいき先生の4名が務めさせていただきました。
メンタリングの内容は
- 自己啓発(目標やモチベーションの向上)
- キャリア教育(キャリアの観点育成や進路相談)
- カウンセリング(保健室的な悩み相談)
- ITeens Lab活用のガイド
- レクリエーション(面談自体を楽しむことが目的)
- コーチング(本人のやりたいことを掘り出していく)
上記の中から各生徒に合った内容をメンターが選び、進めていきました。
本期間においての課題
- 担任を受け持つスタッフにメンタリングを経験してもらうことによりITeens Labスタッフ全体でメンタリングに対する意識を広げる
実施してみてのフィードバック
生徒本人の感想
- 受験に向けての課題に取り組むことができました。
- 自分の今までについて振り返り、自分に向いている職業を調べることで、自分の将来に活かせる時間になったと思うのでよかったです。
保護者の感想
- 普段と違い、自分と向き合う時間になったようで良かったと思います。もう少し回数重ねることで、自分を改善・高める具体的な方法まで意識を持っていけたら良いなと思いました。
- 受験に向けた課題に先生のアドバイスを元に取り組むことが出来ました。
- 年齢が近い先生の意見や考え方にふれることが出来るのはとても良いと思っています。
- 心理学の資格をもった先生が対応する、先生の選択・希望を出せる、もっと回数を多くする、などができるとより良いと思います。
メンターを務めた先生の感想
- メンタリング内でAIを活用し、それをゼミでも活かせるようになった。
- ゼミでコミュニケーションを以前よりも取れるようになった。
- メンタリング後のゼミで会話が増えた。
- ゼミで担任として話していたときよりも生徒について深く知ることができた。
- 生徒が抱えていた課題について二人で相談しながら解決策を模索していくのが基本となり、その中で出た雑談や生徒の中にある哲学や信念の発露などを積み重ねて、関係性の解像度が上がっていった。
- 不明瞭な要素があると発言を控えていた生徒が、複数の可能性について少しずつ触れてその事柄の概形をあぶりだして行くような考え方、会話をしてくれるようになり、話が上手くなったと感じた。
- ワークを深く実施する場合は時間が60分ほしい。
- メンタリング単体としてのサービス化は難しいかも?負担が大きい。
- 一方的に講師側がやる気を見せても成立しない、熱量の差が大きい。その場合は、きっかけを掴む、スタート地点まで持っていく所がゴール。
課題に対しての所感
- 各クラスの担任の先生がメンタリングを経験したことにより、ゼミでの生徒とのコミュニケーションのクオリティアップが期待できる。
- しっかりと生徒と向き合ってコミュニケーションを深めることで、生徒の取り組む姿勢やコミュニケーションの質が上がることを理解できた。
- 今後は各クラスのゼミの進行の中に、積極的に生徒1人1人との1on1を取り入れていく。
今後の展開
メンタリングの時間を特別に設定するのではなく、クラス内での1on1へ引き継いでいくことで、より継続的に・多数の生徒に展開していきます。
これからの課題
- クラス内での1on1を実施していく
- どのような頻度ややり方で1on1のメンタリングを実施していくか、様々なパターンを検証する
これまでのメンター制度のまとめ
第1期の概要
期間
2023年1〜3月
対象
5組の生徒・保護者
実施方法
毎月生徒・保護者それぞれとメンターが30分ずつの面談を実施
メンター担当
こば先生・ドゥー先生・とよ先生
課題とそれに対する所感
- 生徒からニーズがあるか調査
- 申し込みフォームがほぼ保護者のみで完結だったために生徒ニーズに関してはあまり分からなかった。
- 2回め(2023年4月)の申し込みではフォームにて生徒の意志も聞き取るようにした結果、生徒からも少なからずニーズがあることが分かった。
- 保護者からニーズがあるか調査
- 限定的な募集であったにも関わらず、申込数は少なくなかった。
- ただし、母数を考慮するとさほど多いとは言えない。
- 周知が徹底できていない側面もあるので、今後さらにニーズの掘り起こしが可能だと考えられる。
- 現実的にどの程度のリソースが必要になるか&メンタリングを実施する上での実務的なタスクの洗い出し(予定を実行してすり合わせる)
- 面談時間と別に、準備に時間がかかることがわかった(これは予想していたとおりだった)。
- 面談の時間は月に30分程度なので、スケジュールがまとまればメンター側のリソースはそこまで重くない。
- スケジュール調整にリソースがかかった。
- メンタリングの内容や目的方針などをすり合わせるために、メンター間での情報交換・ミーティング・また通常の授業担当の講師との情報共有が重要なことが分かった。
- 月30分程度のメンタリング(面談)で何かしらの変化・効果が得られるか
- 事例
- Sくん
- 行動変容が見られた
- Kちゃん
- 保護者が知らない本人の内面を聞き取ることができた
- Sくん
- 事例
- その他、実際に実行した際に、得られる問題点や課題・メリットを洗い出す
- いわゆる学校の先生などと別に、様々な大人と接する機会を作りたいという保護者ニーズが想像以上にあった。
- 関係性の構築が、予想していたよりも重要であることが判明した。
- 関係性の薄い生徒に対するメンタリングがあまり成果がなかったように感じられた。
- 生徒側の学年によって、メンター制度から享受できるメリットに差があるという仮説がたった。
第2期の概要
期間
2023年4〜7月
対象
8組の生徒・保護者
実施方法
毎月生徒・保護者それぞれとメンターが30分ずつの面談を実施
メンター担当
こば先生・ドゥー先生・とよ先生・くろけん先生・とみお先生
課題とそれに対する所感
- 担当スタッフを増やし、視点を増やす
- スタッフによってはメンタリング自体のコストが非常に高い場合もあった
- 担当スタッフごとにどんなメンタリングにしたいかを表明してもらう
- メンターによってスタイルを変える
- 生徒次第となってしまった部分は大きい
- 参加する生徒から要望をもらってスタートする
- 明確な要望のある生徒に対しては効果的に作用した
- 一部の生徒は前回のメンタリングから引き続き継続してメンタリングに参加する
- メンタリング期間が最低でもどれくらい必要なのかの検証
- メンターとの関係性がない場合、4回のメンタリングは少なく感じた
- 同じ生徒をメンターを変えてメンタリングを実施してみる
- スタッフとの相性などによりどの程度変化が起きるか観察
- 生徒の求めている質問などに対してスタッフが該当するスキルを持っていない場合がある
- 一部の保護者のメンタリング参加時間の比重を減らす
- 保護者は毎回参加ではなくても良さそうだった
第3期の概要
期間
2023年8〜11月
対象
8組の生徒・保護者
実施方法
毎月1回60分の面談・指導を「パーソナルトレーナー」として実施
保護者は初回と最終回のみ参加
メンター担当
こば先生・ドゥー先生・とよ先生・くろけん先生
課題とそれに対する所感
- 主なメンタリング内容を対話のイメージからパーソナルトレーナーへ変更して実施
- メンタリングからの次の段階としては適していた
- 「生徒のスキルを伸ばす」ことに主眼をおいたメンタリング
- 相応の成果は得られた
- 保護者とのメンタリングを減らし、生徒本人とのメンタリングに比重を置く
- 生徒への指導は充実したが、保護者への進捗報告などのコストが別途発生することになった
- 先行研究などの調査
- 先行研究の調査とまとめを実施し、レポートを各メンターで共有した。次回のメンタリングでは既存のセオリーをしっかり踏襲した形で実施できる
第4期の概要
期間
2023年12月〜2024年3月
対象
9組の生徒・保護者
実施方法
毎月2回、30分ずつの面談を実施
保護者は初回と最終回のみ参加
メンター担当
ドゥー先生・とよ先生・くろけん先生・とみお先生・りか先生
課題とそれに対する所感
- メンタリングに再現性を持たせるためにフレームワークを設計
- どの先生でも一定の成果を出せるようにする
第5期の概要
期間
2024年4月〜2024年7月
対象
4組の生徒・保護者
実施方法
毎月2回、30分ずつの面談を実施
保護者は初回と最終回のみ参加
メンター担当
ほたか先生・やましょー先生・あいき先生・たにえん先生
課題とそれに対する所感
- メンタリングを経験していない先生に、メンタリングを経験してもらう
- メンター制度を単体としてサービス化するのでなく、通常のクラスやゼミの中で活用していく方針をとる
今後も長期的に実証実験を繰り返し、より良い教育の在り方を模索しながら、進捗を共有していく予定です。