毎週日曜日19:00〜20:00、ITeens Labの代表・古林と共同代表・近藤がお届けするライブ配信【教育をUPDATE】。
この記事では、配信の様子をダイジェスト版でお伝えいたします。
今回のゲストは、株式会社Innovation Power CEO の宮島衣瑛(きりえ)さん。
一般社団法人 CoderDojo Japan 理事も務め、全国で実践研究を行っていらっしゃいます。
学習院大学大学院で教育について勉強する宮島さんに「学校教育のこれまでとこれから」について話をお聞きしました。
教育の選択肢を増やす 株式会社Innovation Powerとは
僕はじめましてですね!!よろしくお願いします。
僕は二度目ましてですが、やられていることをあまり詳しく知らないので、自己紹介お願いします!!
株式会社Innovation Power CEO、一般社団法人 CoderDojo Japan 理事をやっている宮島衣瑛(きりえ)です。現在、学習院大学大学院人文科学研究科教育学専攻に通いながら仕事をしています。
テクノロジー教育をベースに実験したり、実装したりしています。
株式会社Innovation Power(https://innovation-power.jp/)は、2015年、高校2年生の時に起業しましたが、実はその前に、2013年に地元の千葉県柏市で CoderDojo(https://coderdojo.jp/)を立ち上げていました。
その立上げも、2012年の夏にMIT(マサチューセッツ工科大学)で開催されたScratch(プログラミング教材)のカンファレンスに日本代表として参加したら唆されたからって感じです(笑)
2014年の11月に「学校教育とプログラミング」についてスピーチすることがあって、テーマが今ほどブームじゃなかったこともあって、仕事に繋がっていきました。
CoderDojoが任意団体だったので、どうしようか悩んで結果株式会社Innovation Powerを始めました。
最近だと教育の研究開発(R&D)をしています。
例えば、企業がCSRとして、子ども対象のイベントをやる時に一緒に取り組むことで参加者に良い体験を提供できるようにするコンサルティング的業務をやっています。
実際どんなことやるんですか?
僕たちにそういう仕事が来たことがないから想像できないっす(笑)
Amazon JapanさんのKindle Fireタブレットを使ったSTEM教育の教材、ワークショップ、実装のお手伝いとか、明光義塾を運営する明光ネットワークジャパンさんのプログラミング教室部門の立ち上げのサポートで教室デザインや使う机や椅子、配置までアドバイスさせていただきました。
カリキュラムなどのソフトウェアの部分にも携わらせていただいたので、僕たちの経験の集合体のような教室になりました。
ITeens Labも教室運営をやっていた時は、机の配置とかそうとう工夫しましたね!!
机の配置ってめっちゃ大事なんですよね!日本の伝統的な机の並びは、もう海外ではほどんどなくて「コの字」型の配置、ずっとグループワークが主流になっています。
低学年は発達的にグループワークに向いていないので、低学年(1,2年生)は二人でワークさせて、3,4年生ぐらいからグループワークを始めることが多いですね!!
「なんとなくGWしたらいいんでしょ」って感じがありますが、裏には教育学的な研究成果があるのでそこを大事にしたいっていうのが僕たちの会社ですね
つまみ食いで勉強をしているけど、論文までは読めていないから教えてほしいですね!
教育学の論文は理系と違って、最新のものが良いかどうかに議論の余地があるから「古典から学べ」と教授からしょっちゅう言われます。
自分なりに解釈するのが大事で、僕はそれをデジタルテクノロジーの視点で考えているかんじです。
グループワークの話とか学年ごとの発達に合わせた教え方について聞きたいですね。
ITeens Labは、小学3年生~の生徒が通っていて5年生以降が多いですね。1,2年生も少しいますが(※2021年9月現在は完全に小学3年生以上)。
CoderDojoにも1,2年生はいますが、難しいことは出来ないので絵を描いて動かして「楽しい」っていう感じになります。「自分の予想しないことができておもしろい」ってなるのでいいかなと思っています!!
だから、いろんな段階に沿える教材を用意してあげることが必要だと思っています。
ただ、「段階に沿う」というのを誰が判断するかが大事で、子どもたち自身に委ねたいという想いがあります。
大人のできることは教育の選択しを増やしてあげることで、時間はかかるけど「良い教育」に辿りつくには必要だと思っています。
先生のポジションが変わり始める!?
こばさんも気になるところあったらどんどん聞いてください!!
「日本の教育って遅れてるよね」「学校の○○が良くない」って外野からいうのは簡単だと思うんですけど、教育学的知見から「こういう誤解があるよ」「こういう言い方はよくない」っていうのがあれば教えて欲しいです!
「学校教育が遅れている」と言っても、何にとって遅れているのかという問題があって、OECD加盟国で実施されるテストでも全体的なレベルでは、日本は上位層に入っているんです。(2018年度実施)
ただ、今回のテストで「読解力」が強くないということが分かりました。また、コンピューターを使って受けるテスト形式に対応できなかった。とかいろいろ言われていますが、研究されていないからはっきりしたことは分かっていないんですよね。
それでも色んな場所で「こうしたらいいじゃない」的なことが言われますけど、「今なんでそうなっているのか」を考えることが大事だと思っています。
分かりやすい例でいうと、コロナウイルスの影響でオンライン授業が始まりましたけど、対応できた学校とできていない学校がきれいに分かれましたよね。
大きな原因として「教師の多忙化」があげられますけど、そもそもなぜ先生たちが多忙化したのかとか、時代による家庭環境の変化など色々な要素作用しています。
教育の問題は経済とか政治の問題かもしれないから、あくまで持論ですが、教育だけじゃないことも知ることが大事で、表面だけで批判するのは違うなぁって感じます。
うんうん。
「大改革」とか言い出すと今のシステムを全て壊さないといけないしなかなか難しいけど、今回のコロナウイルスの影響で兆しは出てきました。ただ、学校によってばらつきがすごいんですよね。
そこで、コンピューターを導入したら全部解決されるかというとそれは違うし、デジタルテクノロジーを使いこなせる側の人は「どう使えば問題を解決できるか」を分かっているけど、実際の教育現場で研究は進んないんですよね。
今話題になっている「オンライン教育」についてもですが、オンライン授業とオフライン授業の差って解明されてないわけですよ。そこがデジタル教育の難しいところで(笑)
「学校の先生は忙しい」って言われているのに採点とか掃除をしているのどうなん。って話が簡単に出てくるけど、先生からするとそれが「子供たちとのコミュニケーション」だって意見が出てくるじゃないですか。
「効率化しよう」「○○をやめよう」っていうのは教育現場を知らない人たちからの一面的な意見に近くて、簡単に「それやめろ」って言ってはいけないと思う。「効率化しよう」という考えはいいと思うけど!!
今起きている大きな問題は「勉強=先生が教えるものじゃなくなっている」ことだと思うんですよね。学習、学力をたんにんの先生が背負うのを辞めて、チューター的な役割で生活とか勉強の進度を管理する、一般的に言われている先生たちがやっている無駄なことが一番大事だと思うんがどうですか?
(なかなか踏み込んだ話が展開され、3人で苦笑いが起こることも(笑))
海外とかだとどんな感じなんですか?
アメリカでは掃除とかの常務には専門のスタッフがいて、先生は教えることに専念できる環境になっています。日本でも専科の先生が増えて少しずつ改善はされているが、公立学校に関してはお金の問題が大きいですね。
今だとアルコール消毒の時間が増えて他の業務がさばけないようになっています。子ども達の様子を見るっていうのが一番大切で先生にしか出来ないことだと僕も思います。
学校の役割が変わらざるを得ないのは当然のことだと思っていて、歴史上学校教育はメディアの変化に伴って変わってきました。
コンピューター、インターネットというメディアについて研究を進めて、人々の学びの本質にどう影響するかを見極める必要があるタイミングだと思います。
僕の私見ですけど、(古林さんの意見に賛成で)先生は「学びの専門家」から「人間の専門家」に変化する方がよいと思います。
公教育と民間企業との連携が未来を変える
政治とも似たような話になるんですけど、中央集権型(文科省が舵をとり均一化する)と分権型(学校に権利があり予算やカリキュラムが決められる)のとどっちが良いのか宮島さんの意見を聞きたいですね!
教育大国と言われるフィンランドでは教科書の採択から学校ごとに違います。日本は市町村の教育委員会単位で教科書の採択がされていて、カリキュラム(学習指導要領)は最低限文科省が決めています。
昔は、中央集権的だと思っていましたが(大学生時代に)教育実習に行ったことで考えが変わりましたね!
ぶっちゃけ話ですけど、授業のほとんどが「教科書の教科書」である先生用のガイド本を見れば出来ちゃうんですよね(笑)
あれの存在に疑問を感じましたね。
(先生にアレンジ性・カスタマイズ性が預けられていたはずなのに存在することで)逆に思考停止させちゃってるってことですよね(笑)
そうです。見れば苦手な教科や分野も出来ちゃう(笑)教える型みたいなものが決まってしまうから、アレンジ性、カスタマイズ性をどこまで出せるかが先生の腕にかかっています。
しかし、先生たちはやることが多すぎて全てアレンジ・カスタマイズできなくなっていて低いラインのルーティンで回っている感じがします。
なので、行政的な仕組みだけが問題なのか、使われている教材とかも均質的な授業をつくりあげている要因になっているよのではないかと思います。
意外といいバランスで出来ているんですね(笑)
そうなんですよね!!日本の教育モデルは完成されていると言われていて、発展途上国ではものすごく有効と言われています。
ある程度有用なものだったけど今の日本には合っていないんだけなんですよね。
このシステムは完成してしまったから、書き換えにくいって感じですか?(笑)
そうです!(笑)出来上がったものを書き換えるのってめんどいじゃないですか。プログラミングと一緒で(笑)
よく近藤とも話しているんですけど、僕らは言っても一業者だから学校の制度とかはもういいやって考えていて(笑)
僕らがチューターとして僕らなりのコミュニティー、形を創り上げたいと思っていて、個人としては公教育に入っていくつもりがないんですよね(笑)
めちゃくちゃ賛成です。公教育は公教育ができることをやって、民間は民間の出来ることをするのが一番いいですよね!!
変に民間が公教育に関わらない方がいいと思っています。熱量とか奪われるし(笑)
民間でゴリゴリ学校教育に入っていこうとする人たちスゴイですよね(笑)
会社の規模的には勝負をするのは難しいから、根本的なことができる研究に僕は身を置いています。
攻めるにしても学校機関との関係性の構築を大切にしないと何もできないので、今はそこに注力しています。
研究者の悩みは現場を知らないことで、現場の悩みは現場の事で精いっぱいで新しいことができない。そんな時に、僕らは新しいことに挑戦してデータを採る事ができる。
三者間で情報共有のよいバランスをとれることが大事だと思いますね。
そうですね。僕も常に実践家として機会をいっぱい作っていきたいですね。
(宮島さんオススメの一冊「Lifelong Kindergarden」)